「噂のひとり歩き→炎上」から自分の身を守る、会議資料に貼っておくべき1枚のオブジェクト
コンサル会社などで作る資料には、よくページの右上に、たとえば以下のようなオブジェクトが貼られています。
これは文字通り、「いろいろ情報がまとめてあるけれど、これはあくまでDraft(草案)だよ」という断り書きです。他にも、人や会社によって「Tentative」(仮)とか「W.I.P」(Work In Progress=作成中)とか、あるいは日本語そのままで「作成中」などと書いているようです。もちろん、資料の内容が確定したら剥がします。
このようにするのは、まず会議の参加者など資料の読み手に「あくまで仮」であることを強調するためです。
コンサル会社では資料を丁寧に綺麗に作ることが求められますが、それゆえに、ドラフトでも出来上がっていると、なんだかこれが規定路線であるかのような錯覚を与えてしまうことがあります。
私も、あるプロジェクトにてドラフト資料を見せたとたん、「ちょ、ちょっと待って、これもう決まってるの?聞いてないよ、いつ議論したの?」と、お客様を一瞬慌てさせてしまったことがあります。
そうならないように「Draft」と示しておくことで、これを叩き台に内容を詰めていきましょう、別にこの内容で決まったとか、これを押し付けるわけではないですよ、という意図を理解していただくわけです。
(なので、資料が読みにくくならない限りはページの中心にどーん、とシールを目立つように貼っているケースも見受けられますね、以下のように↓)
そして、この手のシールを貼るもう1つの理由は、会議の参加者以外の人にも「あくまで仮」であることを示すためです。
作った資料は、会議の参加者や関係者だけが読むとは限りません。参加者から、参考情報として他の方に転送されたり、資料の一部が再利用されることもあります。
私も、作った資料の一部が、お客様のエラい方が作った資料の中で再利用されるのをたびたび目にしたことがあります。もちろん使えるから使っているわけで、資料のクオリティを認めていただけたのは嬉しいことではあります。
しかし、万が一、それを見た別のエラい方が「なんだこれは!」みたいなことになった場合、めぐりめぐって(いくらかの責任転嫁も混じり)、最初に作った人がその内容を責められる可能性がないとは言い切れません。
たとえば私の経験談。あるプロジェクトで「XXXシステムの導入効果の分析」みたいな資料を作ったことがあります。それを関係者で回覧していたところ、だれかがそれをプロジェクト外に転送し、どんどんと社内をひとり歩きし始め、組織にありがちな伝言ゲームも交じり、いつのまにか「XXXシステムを導入が決まったらしい」みたいな話に変わっていたことがあります。なんという会社の会談((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
そのときは幸い、それを早期に把握できたので訂正に動き、大事にはならなかったのですが、もしそれが、XXXシステム反対派のエラい方の耳に入ったとすれば、「なんだそれは!聞いてないぞ!」とそこから火がつき、延焼に延焼を重ねて、資料を作った私が理不尽な吊るし上げを喰らう…、ということも考えられたわけです。
その場合、丁寧に説明すれば誤解は解けたかも知れませんが、それでも多少の不信感や気まずさは残るでしょうし、誤解を解くまでの時間やエネルギーを無駄に消費することになります。
つまり、資料が確定版なのでなければ、そのことを常に断り書きとして明示しておくべきということです。ちょっとしたことですが、そのちょっとが、皆さんの身を守ってくれることにつながります。
なお、せっかく「Draft」と貼っていてもそれを「邪魔だから」とわざわざ剥がして転送する人も無きにしも非ずなので、可能であれば配布資料は編集不可に設定したり(オプションでパスワード設定できます)、PDFにして配布するなりしたほうが、より確実だと思います。
自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。
「思考の整理」は本質的には「部屋の整理」と同じである
はじめまして、井上と申します。このたび、若い方向けに「思考整理」のノウハウを解説した書籍を執筆・出版したことを機に、ブログにてさまざまな情報発信をしていくことにしました。
ちなみにこちら↓が前著です。
誰でも使えて成果が出る 外資系コンサルタントの仕事術 (アスカビジネス)
自著を読んで当ブログまで来てくださった皆様や新聞広告を見てググって来てくださった皆様、本当にありがとうございます。本の理解をさらに深めるネタや、本には書ききれなかったネタなどを紹介していければと思います(もちろん、読まれていない方でも分かるように書いていきます)。
まず、本記事では、自著の宣伝を兼ねて「思考整理」とは何かについて簡単にご紹介します。
【整理に必要な手順はこの2つ】
「思考整理」とはなにやら難しそうな響きですが、これは「部屋の整理」と比べて考えると分かりやすくなります。手順や特徴が、実はかなりの部分で共通しています。
まず、「整理」の意味をgoo辞書(デジタル大辞泉)で調べると、以下のように説明されています。
- 乱れた状態にあるものを整えて、きちんとすること。「資料を整理する」「気持ちの整理がつく」「交通整理」
- 無駄なもの、不要なものを処分すること。「人員を整理する」
(3,4もありますが特殊な用例なので省きます)
2つの意味がありますが、部屋の整理であろうと思考の整理であろうと、両方とも整理に必要な手順となります。
部屋の整理では、最初に「無駄なもの、不要なものを処分」します。要らないものや使わないものを残しておいては、スペースの無駄づかいになるからです。
次に、残ったものをしまいます。たとえば服はタンスに、本は本棚に…と収納していきます。これが「乱れた状態にあるものを整えて、きちんとする」ということです。
【考え方は「部屋の整理」とまったく同じ】
思考の整理でも、まずは不要なものを取り除きます。
何かを考える際は、必要そうな情報の洗い出しを最初に行いますが、その中に余計なものが含まれていることがあります。それを取り除くわけです。人の頭は、思ったほど多くの情報を扱うのには慣れていません。シンプルに考えられるよう、テーマと関係のない情報はどんどん断捨利していきます。
「ラーメン店A店における商品上の改善点を探す」というテーマで考えてみましょう。調査の結果、以下の情報が集まったとします。
- ナルトが不味いとお客様に言われたことがある
- お店の建物が老朽化している →×
- お店が駅から遠くて不便だとお客様に言われた →×
- メンマが固いのか、残すお客様が多い
- 接客態度が悪いという苦情が目立っている →×
- 麺が多くて食べ切れないというお客様が多い
- チャーシューがボソボソしていると言われたことがある
いろいろな情報がありますが、これをずっと眺めていてもどうしてよいのかわかりません。
そこでまず、テーマに関係しないものを省きます(上記「×」をつけたもの)。「建物」「立地」「接客」は重要な改善点ですが、ここではあくまで「商品」の改善点を考えたいので取り除きます。
そして、残った情報を分類します。ラーメンは大きくは「麺」「具材」「スープ」から構成されているので、「服はタンスに、本は本棚に…」と同じようにグループ分けしてみましょう。
<麺の改善点>
・麺が多くて食べ切れないというお客様が多い
<具材の改善点>
・ナルトが不味いとお客様に言われたことがある
・メンマが固いのか、残すお客様が多い
・チャーシューがボソボソしていると言われたことがある
<スープの改善点>
・なし
こうすることで「具材についての改善点が目立つな」とか「スープについては今のところ問題なさそうだ」という気づきを得ることができます。
つまり、混沌としている情報を秩序立てることで、人は情報のカタマリを理解できるようになり、特徴や傾向を見出すことができ、新しい閃きや行動につなげることができるのです。
「削除」と「秩序」、これが部屋の整理、そして思考整理の2大手順と覚えておきましょう。
【才能やセンスは不要。整理はモチベーションの源泉】
部屋の整理と思考の整理は、手順以外にも共通した特徴があります。
1つ目は「特殊な才能やスキルは不要」という点です。部屋の整理では、「片付け上手」な人も中にはいますが、「服はタンスに、本は本棚に…」と普通に生きていくために必要なレベルの整理であれば、誰でも行うことができます。
思考整理も同じです。上手下手に多少の個人差はあるものの、意識して前述の手順に沿って取り組んでいれば、どなたでも十分に身につけられ、仕事で役立てることができます。
2つ目は「モチベーションが上がる」という点です。部屋の整理を行うと、気持ちが晴れやかになり「さあ勉強がんばるぞ」といった気持ちになると思います。
思考整理もこれと同じで、ゴチャゴチャした頭の状態を脱することで、次にすべきことがクリアになり、行動につなげることができるのです。
【まとめ】
- 思考整理は、部屋の整理に置き換えるとわかりやすい
- どちらも「削除」と「秩序」が大まかな手順
- 才能やセンスは不要。習慣化すれば十分に使える
- 部屋の整理も思考整理も、モチベーション向上に効果的
以上が「思考整理」の概要です。興味をもたれましたら、引き続き同著で学んだいただければ幸いです。(Amazonで試し読み可能。また、6/30ごろにKindle版も発売します)