Paper-Chase's Prayer

コンサル&外資系金融での実務経験をもとにビジネス・仕事術系の雑感を書いていきます。

誰もがPCで毎日数回は実施している、本当は要らない手順(とそれをやめる方法)

■「ゴミ箱に移動しますか?」のムダ

パソコンを使っていて「要らなくなったファイルを捨てる」という操作はどなたも一日何回かやっていると思います。

ファイルを選んでDeleteキーを押すと、ゴミ箱に移動することができます(今までファイルをゴミ箱にドラッグしてた方は時間をムダにしています。ぜひDeleteキーでの削除を習慣づけましょう)。

で、削除しようとすると「このファイルをゴミ箱に移動しますか?」と確認のダイアログが表示されます。しかし、これって本当は要らないと思うんです。

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なぜかというと、誤ってファイルを消去して戻せなくなってしまわないようにWindowsMacでは「ゴミ箱」という素敵な概念があるわけです。誤って消去しても、ファイルは一時的にゴミ箱内にあり、必要なら元に戻すことができます。

このように誤操作への対策がなされてるわけなのに、なぜいちいち「ゴミ箱に移動しますか?」と聞くのでしょうか。慎重といえば慎重ですが、私には二重のフールプルーフ(予防策)はムダなように思えます。


■確認のダイアログを出さない設定にする

ということで私は、この確認のダイアログを出さない設定にしています。設定方法は、ゴミ箱を右クリック→プロパティを選ぶと、設定のダイアログに「削除の確認メッセージを表示する」というチェックがありますので、これを外します。

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これを知ってから数年はこの設定にしていますが、私はそれで困ったことは一度もありません。繰り返しになりますが、誤って消去しても、ゴミ箱から戻せばよいわけです。(余談ですが、消去した直後なら"Undo"(Ctrl+z)ですぐに元に戻すことができます)

今まで何万個とファイルを捨ててきたと思いますが、その数だけダイアログ→「はい」の手間を浮かしてきたわけです。1回につき1秒だとしても、トータルで数万秒の削減です。

また、「いちいち確認してこない」ことの快適さは、この手の設定を活用されている方ならお分かりかと思います。業務中に矢継ぎ早にファイルを作ったり操作したりしていく中で、仕事の流れをいちいち止めずにスピード感をもってテンポよく作業を進めることができます。これが、ショートカットキーやこういった設定の最大のメリットです。

 

※補足:なお、私は絶対に今後使わないファイルを削除するときは[Shift+Delete]で削除しています。これは、ゴミ箱をすっ飛ばして削除します。

ゴミ箱に入っている状態では、復活できる分、当然にハードディスクの容量を使いますが、[Shift+Delete]によって、ハードディスクの容量を使わずに済みます。逆に復活できないというデメリットがありますので、ここだけは慎重な操作が必要になります(上記の設定をしていても、さすがにこっちの場合は確認のダイアログが出てきます)。

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自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。

paperchase.hatenablog.com

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会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

 

 

Excelファイルの受け渡しで「気が利かない奴だ」と思われないための5つの注意点

研修やセミナーでExcelによる作業の効率化」について教えることがあります。以前にも某大手金融機関の方を対象に講演させていただきましたが、毎日の作業で面倒に思っていた処理を瞬時に済ませるショートカットキーを知ることができたりと、おかげさまでかなり喜んでいただきました。

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ところで、Excelの効率化は「個人」と「個人間」の2つの視点から考える必要があります。

まず「個人」は、新しいショートカットキーや機能、関数などを知ることによって、個人の作業速度を上げていくという視点です。私のセミナーでもこれが大部分ですし、これらのノウハウを解説した書籍やサイトも多く用意されています。

ただ、もう1つ忘れてはならないのが「個人間」の視点、つまりExcelファイルを人から人へ受け渡す際に気をつけるべき点や工夫すべき点がある、ということです。みなさんもファイルを受け取ったときに困ったことやトラブったこと、手間取ってイラっとしたことがあるかも知れません。

後ほど事例をご紹介しますが、ここを上手くやらないと数十分とか、場合によっては数時間のロスにつながることもあるのです。また、そのロスの原因である作り手に対して「気の利かないやつだ」という評価が下される可能性もあります

本稿ではExcelファイル受け渡しでタイムロスあるある」を5つ挙げていきます。皆さんのチームの中で共有し、意識していただければ、いくらかのロスを避けられるはずです。

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①複数のシートを使っている場合には、その旨を確実に伝えておく

私の失敗談です。プロジェクトで一緒のAさんに、あるデータの準備を依頼し、それが送られてきました。しかし、お願いしたはずのデータが見当たりません。メールや電話でAさんに問い合わせたのですが、Aさんは会議中だったり外出中だったりでなかなかつかまりません。その間、必要な作業を進めることができず、イライラします。

数時間後、ようやくつかまったAさんから返ってきた答えは

「あ、そのデータならSheet2にあります」

というものでした。そんな経験が何度かあって、いまでこそ私は受け取ったファイルのシートをすべてチェックするようにしています。しかし、そういう経験がなかったり、別シートの存在をつい忘れたりすると、このようなドツボにはまります。(ちなみにシステム開発プロジェクトの遅延は、こういったくだらないコミュニケーションのロスの積み重ねで起きていたりします…)

複数のシートを使う場合には、メール本文やファイル内で「XXXのデータは"XXX"シートにあります」などと記載しておきましょう(記載しても見落とす方が時々いるので目立つ色や大きなフォントで絶対に見落とされないように!)。

また、シート名はデフォルト("Sheet2")では何も入っていないシートと誤解されがちなので、適切な名称を設定(&タブの色を変更しておくとより目立ちます)しておきましょう。

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②行や列の非表示は使わない

不要な列や行を非表示にしている方を見かけますが、これも見落とされがちです。たとえば下図の場合、国語60点、数学70点なのに合計180点となっています。実はD列が非表示になっており「英語50点」というデータがあるのです(Excelの仕様上、非表示にされていることはほとんどわかりません。下図のとおりC列とE列の間の線がわずかに太くなっているだけです)。

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それに気がつかなければ、なぜここの計算が合わないのか延々と悩むでしょう(①と同じで、作成者に聞いても連絡がつかず作業が進められないという事態も起こりえます)。最悪の場合、180の部分を130に直してしまって、シートの計算が合わないファイルを作ってしまう、ということもありえます。お金が絡んだシートなら、それが原因で誤請求や支払いミスの発生も考えられます。

行や列の非表示は基本的に使わない、やむを得ず使うのならその旨を相手に漏らさず伝えておくことが必要です。


③文書を作ったら、送付前に印刷プレビューを確認しておく

仕事でさまざまな会社に関わってきましたが、私の感覚では8割くらいの方が、資料が完成したことで満足してしまうのか、印刷設定まで意識が及んでいません。

ですので、受け取ったファイルをうっかりそのまま印刷してしまうと、A4で横2ページに切れた表が印刷されてしまう、といったムダが起こります(縦に5ページなら合計10枚のムダな紙が生まれます)。時間だけでなく貴重な紙資源もロスしてしまうわけです。

「家に帰るまでが遠足です」という校長先生の名言がありますが、「印刷設定するまでが資料作成です」と肝に銘じておきましょう。

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④ページ数の多い会議資料はフッターにページ番号を仕込んでおく

ページ数が多い資料で、かつ会議で使われる場合には「いまどこのページの話してるんだっけ?」というふうに読み手が迷子になりがちです。

そのような場合には「フッター」(シートの下端)にページ番号が表示されるように設定しておきましょう。そうると「それでは5ページ目をご覧ください」というふうに、会議が円滑に進められます。シートに行を追加・削除しても自動的に適切なページ番号に設定される点も手書きでページ番号を入れるのに比べて便利だと思います。

なお、複数の文書を会議で用いる場合には、フッターに「ファイル名」が表示されるように設定しておくと、よりわかりやすくなります。

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⑤カラーを使う場合は同じ明度の利用を避ける

私たちが使うパソコンは当然カラーですが、印刷は白黒(グレースケール)という会社が多いと思います。カラー印刷はコストが高いので、私がいた会社でも、お客様向けに渡す資料などを除いては原則として白黒、とされていました。

その場合、パソコンの画面では色の違いを出していたのに、白黒では同じになってしまうことがあります。たとえば下図のような「水色」と「ピンク」。違う色どうしですが、白黒では同じような薄いグレーになります。これがグラフや条件付書式などで使われると、違いがわからなくなります。

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よって、複数の色を使う場合で、白黒印刷される可能性がある場合には、明度が大きく異なる色を設定しておくことをオススメします。上図の3段目のように、塗りつぶしの設定から「テクスチャ(模様)」を選ぶこともできますので、これらを使うと、より確実だと思います。

まとめ

  1. 複数のシートを使っている場合には、その旨を確実に伝えておく
  2. 行や列の非表示は使わない
  3. 文書を作ったら、送付前に印刷プレビューを確認しておく
  4. ページ数の多い会議資料はフッターにページ番号を仕込んでおく
  5. カラーを使う場合は同じ明度の利用を避ける

以上5点を挙げました。

これらだけでも意識することができれば、チーム内でのファイルのやりとりにおいてタイムロスを減らせるはずですし、また、「お、ちゃんとページ数を設定してくれてて、気が利くなあ」などと周囲から認めてもらえるようになるはずです。

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仕事上の多くのコミュニケーションミスは「お互いの都合の良い解釈」から生まれるという事例

実話にややフェイクを入れて語ります。

営業部で事務を担う稲垣さんは、部内の営業担当者30名から、毎週末に週報を提出してもらい、とりまとめて部長に送付することになりました。

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月曜~金曜の活動内容をまとめ、金曜の夕方に提出です。
そのため、稲垣さんは毎週水曜日に提出依頼のメールを出すようにしました。

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それが4週ほど続いた後のある週、稲垣さんはこの水曜日のメールを出すのを忘れてしまいました。金曜の昼になって稲垣さんはそのことに気づきましたが、稲垣さんはこのように考えました。

「まあ、今まで4週間続けてきたし、言わなくてもみんな気を利かせて提出してくれるだろう」

 しかし、実際に提出してくれたのは30名中12名。提出率は半分にも届きませんでした。当然、部長から「いつもの週報は?」と言われ、集められていないことを知って叱られてしまいました。

たしかに12名は

「今までも4回送ったし、稲垣さんから連絡ないけど今週も提出したほうがいいんだろう」

と判断しました。しかし残りの18名は

「依頼がないから、送らなくていいか」

と判断しました。

 

多くの人は、判断を迷ったときに無意識に都合よく解釈して「ラクな方の選択肢」を選ぶようです。特に一般に営業の仕事は忙しいですから、「週報を書く手間が省ける」選択肢は、魅力的な悪魔の囁きにも映ったことでしょう。

 ただし、着目すべきは、稲垣さん自身も「ラクな方の選択肢」を選んでいる点です。

金曜日の昼に連絡漏れに気づいたのなら、すぐにでもメールを出すという選択肢もあったはずです。そうすれば、もっと提出率は上がったはずです。しかし、連絡漏れについての謝罪がいやだなあとか、いまさらメール書くの面倒くさいなあといった心理が、「提出してくれるだろう」という都合の良い解釈を導いたわけです。

このように、仕事においてコミュニケーションを起因に起こるミスやトラブルの一部は「お互いの都合の良い解釈」が原因で起きるのです。

私もコンサルティング会社にてさまざまなプロジェクトに関与してきて、大小さまざまなミスやトラブルを経験してきましたが、振り返ってみると、このパターンに当てはまることがいくつも見当たります。

一方だけが都合よく解釈するのであれば、もう一方が問題の悪化を食い止めることができます(優秀なコンサルタントはたいていこれができます)。しかし、それが双方になることで、重傷レベルの怪我に拡大していくのです。

直接的には稲垣さんの連絡漏れが原因ですから、まずは「水曜のメール送付を(プログラムを組むなどして)自動化する」といった改善は必要です。しかし、これだけでは他の仕事で同じようなシチュエーションになった場合に同様のトラブルを避けることができないでしょう。

たとえば私などは、稲垣さんのような事例をチーム内の勉強会で共有して議論してもらい、「判断が必要な場面では安易に都合の良い選択肢を選ばない」姿勢を定着させようと試みています。

直接的な再発防止策だけでなく、こういった根本的なところにもアプローチしていくことが、応用力のある改善には求められるのだと思います。

上司や顧客に違和感・不安感を与えない、美しい「箇条書き」の作り方

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文章や文書を分かりやすく作るうえで「箇条書き」は不可欠です。
たとえば、

今日は営業会議に出て、得意先X社に行って商談して、Y社向けの提案書を作って、夜は部内の飲み会に参加。

といったダラダラした文章を

【今日の予定】
・営業会議への参加
・X社への来訪・商談
・Y社向けの提案書の作成
・部内の飲み会への参加

 というふうにスッキリ見やすくすることができます。拙著「思考整理のキホン」でも箇条書きの活用について解説しています(←宣伝)。

 

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しかし、この箇条書き、ただ並べればよいというものではありません。私もよく上司・先輩に指導されましたが、ときおり「美しくない箇条書き」が散見されます。

たとえばこのようなケースです。文書作成に慣れていない若手の資料ではよく見られます。

【売上低下の原因】

  • 魅力的な商品がないこと
  • 店員の接客スキルが低いため
  • プロモーション(販促)の不足

見事に文末がバラバラです。

上記の例であれば、たとえばこのようにするべきです。

 

【売上低下の原因】

  • 魅力的な商品がないため
  • 店員の接客スキルが低いため
  • プロモーション(販促)が不足しているため

こういうのもよいかもしれません。

【売上低下の原因】

  • 魅力的な商品の不足
  • 店員の接客スキルの不足
  • プロモーション(販促)の不足

いずれにせよ「文末を揃える」ことが、美しい箇条書きへの第一歩です。

もちろん「中身さえよければ、多少の言葉づかいなんて気にしない」という方もいます。しかし一方で「気にする」という方も一定数いるのです。

神は細部に宿る、です。

文末がバラバラなのが気になってしまって中身に集中できない方もいます。そこで「なんで、これ、揃ってないの?」と話の腰を折られ、プレゼンのペースを崩される、などということもありえます(経験者談)。いくら中身が良くても、そんなことでプレゼンがボロボロになってしまうのはもったいない限りです。

そして、細かい点にもきちんと配慮している点に気づき、書き手に敬意を払う方も確実にいます。私なんかが周囲を見る限りでも、こういう文末に気を配れる人ほど、やはり他の部分も丁寧なように感じています。

気をつけるだけで直せる内容ですから、それで数%でも評価を守る or 高める可能性が増えるのなら、それは着実にやっておきたいところです。


他に、箇条書きにおける「ふぞろい」としては以下のようなタイプがあります。

①「品詞」が揃っていない

【健康に必要な3要素】

  • 運動をする
  • 栄養の摂取
  • 休養を取る

のようなケースです。文末に動詞と名詞が混在しています。これは2個目を「栄養を取る」のようにに変えて動詞に統一すべきでしょう。


②「レベル感」が揃っていない

のようなケースです。最初の3つは犬の具体的な品種なのに、最後が「猫」と大きなレベルで書かれています。事前に内容を整理できていないことがまるわかりです。


③「順序」が揃っていない

【サラダを作るために必要な行動】

  • 野菜を洗う
  • きれいに皿に盛り付ける
  • 食べやすい大きさに切る

のようなケースです。本来は「洗う→切る→盛る」が自然な流れのはずですが、そうなっていないために妙なひっかかりを感じます。「並び順が変なのは、なにか意味があるのかな…?」などと気になりだしたら、もう中身には集中できなくなるでしょう。


顧客サービスにおける伝説的名著「真実の瞬間」には

「(飛行機内で)トレーが汚れているのをみて、お客様はジェットエンジンも汚れている(=安全管理がずさん)と想像するかもしれない」

といった記述が出てきます。人も会社も、すべての実力や品質を見ることができない以上、限られた部分を見て全体を評価するしかありません。そして「箇条書きの丁寧さ」も、そんな限られた部分の一部となってくるはずです。

読み手である顧客や上司に違和感や不安感を抱かせないために、まず「箇条書きを揃える」ことを意識してみてはいかがでしょうか。

 

自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。

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会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

 

組織の意思決定を高速化する「ディスカッション・ペーパー」は「無言のファシリテーター」

■資料がない会議=まとまらない会議

今回は、コンサルティング会社などで用いられている「ディスカッション・ペーパー」について、少し述べてみたいと思います。

たとえばみなさんが仲間と旅行に行くとして、その行き先や旅程を決めるとき、ツアーのパンフレットなどを見ながら話し合うと思います。参考になる資料がないと、なかなか話がまとまりません。

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会社での会議も同じで、何かを話し合う際には、話し合いのための資料があったほうが、議論がまとまりやすくなります。
逆に、特に抽象的なテーマの場合、手ぶらで会議に臨んでしまうと、話があちこちに飛散しまとまらず、時間が来ても結論が出ない、いろいろ意見が出たけど整理しきれない、といった事態になります。

そうなると、会社レベルではライバル企業に比べてスピード感=競争力を失うことになり、みなさん個人レベルでは、不要な残業とストレスが膨れ上がることにつながります。

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もちろん、企画会議であれば企画書を、経営陣への報告会であれば報告書を、と当然に資料が用意される会議もあります。しかし、それ以外の会議では「作る人が決まっていない」「作り方がわからない」「エラい人が出るわけじゃないから、なくても怒られない」といった心理が阻害要因となり、資料が作られることはあまりないようです。


■コンサル会社では必ず資料を作って会議に臨む

一方、コンサルティング会社では多くの場合、議論のための参考資料を作って会議に臨みます。私も、社内の会議であっても「手ぶら会議」はほとんど経験したことがありません。

たとえば「来年の営業計画について、とりあえず意見を出し合おう」のように、あまり話が詰まっていない初期段階においても、インプット(参考)になりそうな情報や議論のポイントを整理した資料を誰かが用意してくることがほとんどです。
こうすることで、旅行のパンフレットと同じで議論がしやすくなり、スムーズに話し合いを進むのです。

また、コンサルティングの営業においても、お客様企業の状況や課題を整理した討議資料を事前に作成しておき、それを用いながらお客様の発言を促し、情報を引き出します。そして、その情報をもとに、提案内容に磨きをかけていきます。もちろん、受注後のプロジェクト中においても、同様に討議資料が大活躍します。

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※お客様と討議するための資料の一例(イメージ)

 

この資料を、議論のための紙ということで「ディスカッション・ペーパー」と呼んでいます(学問や研究の世界でディスカッション・ペーパーと言うと「論文」みたいな意味合いがありますが、それとは異なります)。


■「会議本」「資料本」はあったが「会議資料本」はない?

ディスカッション・ペーパーは、言ってみれば「無言のファシリテーターです。用意しておくことで、議論の脱線を起こりにくくしたり、意見やアイディアを引き出すことができます。会議の生産性を上げるうえでは、ディスカッションペーパーの準備が不可欠なのです。

※社内会議のたびにいちいち資料を作るのは大変、という意見もあるかもしれません。しかし、あまり凝ったものを作る必要はありません。「議論を促す」という目的さえ達成できるのなら、論点を書き出した簡単なメモ書き程度でもよく、それでも十分に効果は見込めます。

 

ただ、書店などを見渡す限り「ディスカッション・ペーパーの作り方」を説いた書籍はあまり見当たらないようです。「会議本」、すなわち会議を円滑化するファシリテーションのノウハウを記した本はたくさんあります。また「資料本」、すなわち説得力があって分かりやすいプレゼン資料の作り方を記した本はたくさん見かけます。

しかし、議論を触発し、会議や意思決定を円滑化する(そして皆さんの残業とストレスを減らす)「会議資料本」なるものは、あまりなかったのではないかと思っています。

また、「ファシリテーション」の解説書は多いのですが、進行役としての「仕切り方」を中心にしており、瞬発力や整理力のいる、なかなか難しい役割ではないかと思っています(私も苦手です…)。それよりは、議論を促す資料をあらかじめ用意しておくほうが難易度は低いと考えています。

 

というわけで、いずれ、そのようなディスカッションペーパーの考え方や作り方を、自分の経験をふまえつつ詳説していければと思います。ご期待下さいませ。

 


 

自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。

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会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

 

「噂のひとり歩き→炎上」から自分の身を守る、会議資料に貼っておくべき1枚のオブジェクト

コンサル会社などで作る資料には、よくページの右上に、たとえば以下のようなオブジェクトが貼られています。

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これは文字通り、「いろいろ情報がまとめてあるけれど、これはあくまでDraft(草案)だよ」という断り書きです。他にも、人や会社によって「Tentative」(仮)とか「W.I.P」(Work In Progress=作成中)とか、あるいは日本語そのままで「作成中」などと書いているようです。もちろん、資料の内容が確定したら剥がします。

このようにするのは、まず会議の参加者など資料の読み手に「あくまで仮」であることを強調するためです。

コンサル会社では資料を丁寧に綺麗に作ることが求められますが、それゆえに、ドラフトでも出来上がっていると、なんだかこれが規定路線であるかのような錯覚を与えてしまうことがあります。

私も、あるプロジェクトにてドラフト資料を見せたとたん、「ちょ、ちょっと待って、これもう決まってるの?聞いてないよ、いつ議論したの?」と、お客様を一瞬慌てさせてしまったことがあります。

そうならないように「Draft」と示しておくことで、これを叩き台に内容を詰めていきましょう、別にこの内容で決まったとか、これを押し付けるわけではないですよ、という意図を理解していただくわけです。
(なので、資料が読みにくくならない限りはページの中心にどーん、とシールを目立つように貼っているケースも見受けられますね、以下のように↓)

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そして、この手のシールを貼るもう1つの理由は、会議の参加者以外の人にも「あくまで仮」であることを示すためです。

作った資料は、会議の参加者や関係者だけが読むとは限りません。参加者から、参考情報として他の方に転送されたり、資料の一部が再利用されることもあります。

私も、作った資料の一部が、お客様のエラい方が作った資料の中で再利用されるのをたびたび目にしたことがあります。もちろん使えるから使っているわけで、資料のクオリティを認めていただけたのは嬉しいことではあります。

しかし、万が一、それを見た別のエラい方が「なんだこれは!」みたいなことになった場合、めぐりめぐって(いくらかの責任転嫁も混じり)、最初に作った人がその内容を責められる可能性がないとは言い切れません。

 

たとえば私の経験談。あるプロジェクトで「XXXシステムの導入効果の分析」みたいな資料を作ったことがあります。それを関係者で回覧していたところ、だれかがそれをプロジェクト外に転送し、どんどんと社内をひとり歩きし始め、組織にありがちな伝言ゲームも交じり、いつのまにか「XXXシステムを導入が決まったらしい」みたいな話に変わっていたことがあります。なんという会社の会談((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

そのときは幸い、それを早期に把握できたので訂正に動き、大事にはならなかったのですが、もしそれが、XXXシステム反対派のエラい方の耳に入ったとすれば、「なんだそれは!聞いてないぞ!」とそこから火がつき、延焼に延焼を重ねて、資料を作った私が理不尽な吊るし上げを喰らう…、ということも考えられたわけです。

その場合、丁寧に説明すれば誤解は解けたかも知れませんが、それでも多少の不信感や気まずさは残るでしょうし、誤解を解くまでの時間やエネルギーを無駄に消費することになります。

 

つまり、資料が確定版なのでなければ、そのことを常に断り書きとして明示しておくべきということです。ちょっとしたことですが、そのちょっとが、皆さんの身を守ってくれることにつながります。

なお、せっかく「Draft」と貼っていてもそれを「邪魔だから」とわざわざ剥がして転送する人も無きにしも非ずなので、可能であれば配布資料は編集不可に設定したり(オプションでパスワード設定できます)、PDFにして配布するなりしたほうが、より確実だと思います。

 

 

自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。

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会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

 

「思考の整理」は本質的には「部屋の整理」と同じである

はじめまして、井上と申します。このたび、若い方向けに「思考整理」のノウハウを解説した書籍を執筆・出版したことを機に、ブログにてさまざまな情報発信をしていくことにしました。

 

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会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン

 

 ちなみにこちら↓が前著です。

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誰でも使えて成果が出る 外資系コンサルタントの仕事術 (アスカビジネス)

 

自著を読んで当ブログまで来てくださった皆様や新聞広告を見てググって来てくださった皆様、本当にありがとうございます。本の理解をさらに深めるネタや、本には書ききれなかったネタなどを紹介していければと思います(もちろん、読まれていない方でも分かるように書いていきます)。

まず、本記事では、自著の宣伝を兼ねて「思考整理」とは何かについて簡単にご紹介します。

【整理に必要な手順はこの2つ】

「思考整理」とはなにやら難しそうな響きですが、これは「部屋の整理」と比べて考えると分かりやすくなります。手順や特徴が、実はかなりの部分で共通しています。

まず、「整理」の意味をgoo辞書(デジタル大辞泉)で調べると、以下のように説明されています。

  1.  乱れた状態にあるものを整えて、きちんとすること。「資料を整理する」「気持ちの整理がつく」「交通整理」
  2.  無駄なもの、不要なものを処分すること。「人員を整理する」

(3,4もありますが特殊な用例なので省きます)

2つの意味がありますが、部屋の整理であろうと思考の整理であろうと、両方とも整理に必要な手順となります。

部屋の整理では、最初に「無駄なもの、不要なものを処分」します。要らないものや使わないものを残しておいては、スペースの無駄づかいになるからです。

次に、残ったものをしまいます。たとえば服はタンスに、本は本棚に…と収納していきます。これが「乱れた状態にあるものを整えて、きちんとする」ということです。

 

【考え方は「部屋の整理」とまったく同じ】

思考の整理でも、まずは不要なものを取り除きます。

何かを考える際は、必要そうな情報の洗い出しを最初に行いますが、その中に余計なものが含まれていることがあります。それを取り除くわけです。人の頭は、思ったほど多くの情報を扱うのには慣れていません。シンプルに考えられるよう、テーマと関係のない情報はどんどん断捨利していきます。

「ラーメン店A店における商品上の改善点を探す」というテーマで考えてみましょう。調査の結果、以下の情報が集まったとします。

  • ナルトが不味いとお客様に言われたことがある
  • お店の建物が老朽化している →×
  • お店が駅から遠くて不便だとお客様に言われた →×
  • メンマが固いのか、残すお客様が多い
  • 接客態度が悪いという苦情が目立っている →×
  • 麺が多くて食べ切れないというお客様が多い
  • チャーシューがボソボソしていると言われたことがある

いろいろな情報がありますが、これをずっと眺めていてもどうしてよいのかわかりません。

そこでまず、テーマに関係しないものを省きます(上記「×」をつけたもの)。「建物」「立地」「接客」は重要な改善点ですが、ここではあくまで「商品」の改善点を考えたいので取り除きます。

そして、残った情報を分類します。ラーメンは大きくは「麺」「具材」「スープ」から構成されているので、「服はタンスに、本は本棚に…」と同じようにグループ分けしてみましょう。

 <麺の改善点>
・麺が多くて食べ切れないというお客様が多い

<具材の改善点>
・ナルトが不味いとお客様に言われたことがある
・メンマが固いのか、残すお客様が多い
・チャーシューがボソボソしていると言われたことがある

<スープの改善点>
・なし

 

こうすることで「具材についての改善点が目立つな」とか「スープについては今のところ問題なさそうだ」という気づきを得ることができます。

つまり、混沌としている情報を秩序立てることで、人は情報のカタマリを理解できるようになり、特徴や傾向を見出すことができ、新しい閃きや行動につなげることができるのです。

「削除」と「秩序」、これが部屋の整理、そして思考整理の2大手順と覚えておきましょう。

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【才能やセンスは不要。整理はモチベーションの源泉】

部屋の整理と思考の整理は、手順以外にも共通した特徴があります。

1つ目は「特殊な才能やスキルは不要」という点です。部屋の整理では、「片付け上手」な人も中にはいますが、「服はタンスに、本は本棚に…」と普通に生きていくために必要なレベルの整理であれば、誰でも行うことができます。

思考整理も同じです。上手下手に多少の個人差はあるものの、意識して前述の手順に沿って取り組んでいれば、どなたでも十分に身につけられ、仕事で役立てることができます。

2つ目は「モチベーションが上がる」という点です。部屋の整理を行うと、気持ちが晴れやかになり「さあ勉強がんばるぞ」といった気持ちになると思います。

思考整理もこれと同じで、ゴチャゴチャした頭の状態を脱することで、次にすべきことがクリアになり、行動につなげることができるのです。

 

【まとめ】

  • 思考整理は、部屋の整理に置き換えるとわかりやすい
  • どちらも「削除」と「秩序」が大まかな手順
  • 才能やセンスは不要。習慣化すれば十分に使える
  • 部屋の整理も思考整理も、モチベーション向上に効果的

 

以上が「思考整理」の概要です。興味をもたれましたら、引き続き同著で学んだいただければ幸いです。(Amazonで試し読み可能。また、6/30ごろにKindle版も発売します)