Paper-Chase's Prayer

コンサル&外資系金融での実務経験をもとにビジネス・仕事術系の雑感を書いていきます。

仕事上の多くのコミュニケーションミスは「お互いの都合の良い解釈」から生まれるという事例

実話にややフェイクを入れて語ります。

営業部で事務を担う稲垣さんは、部内の営業担当者30名から、毎週末に週報を提出してもらい、とりまとめて部長に送付することになりました。

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月曜~金曜の活動内容をまとめ、金曜の夕方に提出です。
そのため、稲垣さんは毎週水曜日に提出依頼のメールを出すようにしました。

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それが4週ほど続いた後のある週、稲垣さんはこの水曜日のメールを出すのを忘れてしまいました。金曜の昼になって稲垣さんはそのことに気づきましたが、稲垣さんはこのように考えました。

「まあ、今まで4週間続けてきたし、言わなくてもみんな気を利かせて提出してくれるだろう」

 しかし、実際に提出してくれたのは30名中12名。提出率は半分にも届きませんでした。当然、部長から「いつもの週報は?」と言われ、集められていないことを知って叱られてしまいました。

たしかに12名は

「今までも4回送ったし、稲垣さんから連絡ないけど今週も提出したほうがいいんだろう」

と判断しました。しかし残りの18名は

「依頼がないから、送らなくていいか」

と判断しました。

 

多くの人は、判断を迷ったときに無意識に都合よく解釈して「ラクな方の選択肢」を選ぶようです。特に一般に営業の仕事は忙しいですから、「週報を書く手間が省ける」選択肢は、魅力的な悪魔の囁きにも映ったことでしょう。

 ただし、着目すべきは、稲垣さん自身も「ラクな方の選択肢」を選んでいる点です。

金曜日の昼に連絡漏れに気づいたのなら、すぐにでもメールを出すという選択肢もあったはずです。そうすれば、もっと提出率は上がったはずです。しかし、連絡漏れについての謝罪がいやだなあとか、いまさらメール書くの面倒くさいなあといった心理が、「提出してくれるだろう」という都合の良い解釈を導いたわけです。

このように、仕事においてコミュニケーションを起因に起こるミスやトラブルの一部は「お互いの都合の良い解釈」が原因で起きるのです。

私もコンサルティング会社にてさまざまなプロジェクトに関与してきて、大小さまざまなミスやトラブルを経験してきましたが、振り返ってみると、このパターンに当てはまることがいくつも見当たります。

一方だけが都合よく解釈するのであれば、もう一方が問題の悪化を食い止めることができます(優秀なコンサルタントはたいていこれができます)。しかし、それが双方になることで、重傷レベルの怪我に拡大していくのです。

直接的には稲垣さんの連絡漏れが原因ですから、まずは「水曜のメール送付を(プログラムを組むなどして)自動化する」といった改善は必要です。しかし、これだけでは他の仕事で同じようなシチュエーションになった場合に同様のトラブルを避けることができないでしょう。

たとえば私などは、稲垣さんのような事例をチーム内の勉強会で共有して議論してもらい、「判断が必要な場面では安易に都合の良い選択肢を選ばない」姿勢を定着させようと試みています。

直接的な再発防止策だけでなく、こういった根本的なところにもアプローチしていくことが、応用力のある改善には求められるのだと思います。