Paper-Chase's Prayer

コンサル&外資系金融での実務経験をもとにビジネス・仕事術系の雑感を書いていきます。

僕が自部門で在宅勤務を導入・実施した際の記録と所感

コロナウィルス問題で多くの企業が在宅勤務・テレワークを導入、あるいはその検討を始めています。「今年は東京オリンピックで通勤や移動が困難になるため、在宅勤務・テレワークが盛り上がってくると思います」と、中小企業診断士の理論研修でも何度か話してきたのですが、思わぬ形でその時がやってきてしまいました。

私自身は、約1年半前に勤務先で在宅勤務の企画・推進を担当しており、自分自身も週1,2度在宅勤務を実施しています。ここでは、これから在宅勤務・テレワークを実施あるいは準備する企業やそれを支援するコンサルタントの方のために、参考までにその体験談および所感を書き残しておこうと思います。

 

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<自部門の状況>

  • 業界:金融
  • 職種:事務方
    ⇒顧客情報も扱うので、当初はウチでは無理では?との雰囲気が圧倒的

<実施による会社へのメリット>

上記のとおり「無理じゃないかな…」という雰囲気だったのですが、いざやってみるとメリットが非常に多く、後述するように課題もなくはないのですが、もはや「在宅勤務無し」の時代には社員も会社も戻れないだろうなと感じています。

  • 生産性の向上:周囲の雑音などの減少により担当業務に専念できる。実際に弊社では処理件数などが改善。
  • 時短社員の活用:育児のため16時までしか働けなかった社員が「在宅でよいなら17時まで可能」となるケースが出てきた。そのため、これまで16時以降は稼働人員が減って負荷が集中していたところ、その負荷が軽減されるようになった。
  • 上記の負荷軽減により、残業時間の削減/従業員満足度の向上が図られた(それによって社員の健康管理向上や人件費削減も実現)。
  • 採用活動においてアピールとなる。というか、ウチの業界的には導入していないほうが「遅れてる感」あるかも。

<実施による社員へのメリット>

  • 通勤(特に満員電車)による時間および体力のロスが無くなる。
  • 特に去年ような超強力な台風の場合など、無理に通勤せずに済む。
  • 通勤が無くなることで可処分時間が増える。通勤1時間の人であれば2時間/日が捻出できる(その時間を勉強とか有効活用していたのであれば別ですが)。
  • 特に時差出勤制度のある会社であれば、たとえば9-18時の勤務を8-17時にすることで、終業後に数時間の可処分時間ができ、育児や趣味、勉強、副業…といった活用ができる。
  • 育児上のメリット。たとえば幼児が複数いる家庭で、奥さんが幼児1人を医者に連れて行く、といった場合、これまでは他の子を残しておけないので全員連れて行く必要があったところ、夫が在宅なので連れて行かずに済むようになる(ただ業務時間中に子供をケアするのはNG)。
  • 災害時や家族の急病時など、在宅であれば時間をかけて戻る必要がなくなり、安心感が出る。

<課題・懸念>

  • 皆さんの会社で実施できるかどうかわからない場合には、まずパイロット(試験的実施)を推奨。1,2名を選定し、社内の会議室を1日確保して、そこに籠もって一日働いてもらうことでバーチャルな在宅勤務を体験する。これによって問題点の有無を洗い出す。
  • 在宅勤務・テレワークによってサボる人がでてこないか問題:自部門の場合はほとんど出てきていない。事務系の仕事では、もしサボれば処理件数などで明らかになるし、企画系・プロジェクト系でも進捗管理やアウトプットを見れば明らか(というかサボっていてもやることやっていれば良い職種だし)。また、「成果が出せていない場合は在宅勤務の承認を取り消す」と明文化しており、上記メリットを奪われないためにもみんなちゃんとやっていると思います。
  • 部門による不公平:弊社の場合はたとえばコールセンターのスタッフは在宅勤務は実現できていない。他に会社にしかない特殊な機材を用いる業務などもNG。しかし、だからといって足並みをそろえていくわけにもいかず、不公平さは飲み込んで「できる人から、できる部門からやる」が現実的ではないかなと。

<他に検討しておくべき点>

運用において考え、決めておかなければならないことは結構あります。

  • 電話があった場合の扱い(転送設定など)
  • 在宅勤務可能日数(現在はコロナのため週5日可能)
  • 勤務開始時、終了時の連絡(To 上司、メンバー)、日報のルール
  • 在宅勤務予定日の、部内への共有方法
  • 急な変更が合った場合の連絡方法
  • Outlook上のルール(予定表への記載、応答メッセージの設定)
  • などなど…

ここを詰めるのが面倒だとか合意ができないだとかで導入が進んでいない会社もあるかもしれません。しかし、現在の(コロナの)状況はそれを待ってくれません。

また、これから在宅勤務・テレワークの導入有無は、その企業の柔軟性や変革力、行動力のリトマス紙として使われていくと思います(というか既に就活の学生などは会社評価の参考にしているんじゃないでしょうか)。ぜひ議論を尽くして最適なルールに落とし込み、上記の数々のメリットを享受していただければ幸いです。

以上