Paper-Chase's Prayer

コンサル&外資系金融での実務経験をもとにビジネス・仕事術系の雑感を書いていきます。

組織の意思決定を高速化する「ディスカッション・ペーパー」は「無言のファシリテーター」

■資料がない会議=まとまらない会議

今回は、コンサルティング会社などで用いられている「ディスカッション・ペーパー」について、少し述べてみたいと思います。

たとえばみなさんが仲間と旅行に行くとして、その行き先や旅程を決めるとき、ツアーのパンフレットなどを見ながら話し合うと思います。参考になる資料がないと、なかなか話がまとまりません。

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会社での会議も同じで、何かを話し合う際には、話し合いのための資料があったほうが、議論がまとまりやすくなります。
逆に、特に抽象的なテーマの場合、手ぶらで会議に臨んでしまうと、話があちこちに飛散しまとまらず、時間が来ても結論が出ない、いろいろ意見が出たけど整理しきれない、といった事態になります。

そうなると、会社レベルではライバル企業に比べてスピード感=競争力を失うことになり、みなさん個人レベルでは、不要な残業とストレスが膨れ上がることにつながります。

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もちろん、企画会議であれば企画書を、経営陣への報告会であれば報告書を、と当然に資料が用意される会議もあります。しかし、それ以外の会議では「作る人が決まっていない」「作り方がわからない」「エラい人が出るわけじゃないから、なくても怒られない」といった心理が阻害要因となり、資料が作られることはあまりないようです。


■コンサル会社では必ず資料を作って会議に臨む

一方、コンサルティング会社では多くの場合、議論のための参考資料を作って会議に臨みます。私も、社内の会議であっても「手ぶら会議」はほとんど経験したことがありません。

たとえば「来年の営業計画について、とりあえず意見を出し合おう」のように、あまり話が詰まっていない初期段階においても、インプット(参考)になりそうな情報や議論のポイントを整理した資料を誰かが用意してくることがほとんどです。
こうすることで、旅行のパンフレットと同じで議論がしやすくなり、スムーズに話し合いを進むのです。

また、コンサルティングの営業においても、お客様企業の状況や課題を整理した討議資料を事前に作成しておき、それを用いながらお客様の発言を促し、情報を引き出します。そして、その情報をもとに、提案内容に磨きをかけていきます。もちろん、受注後のプロジェクト中においても、同様に討議資料が大活躍します。

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※お客様と討議するための資料の一例(イメージ)

 

この資料を、議論のための紙ということで「ディスカッション・ペーパー」と呼んでいます(学問や研究の世界でディスカッション・ペーパーと言うと「論文」みたいな意味合いがありますが、それとは異なります)。


■「会議本」「資料本」はあったが「会議資料本」はない?

ディスカッション・ペーパーは、言ってみれば「無言のファシリテーターです。用意しておくことで、議論の脱線を起こりにくくしたり、意見やアイディアを引き出すことができます。会議の生産性を上げるうえでは、ディスカッションペーパーの準備が不可欠なのです。

※社内会議のたびにいちいち資料を作るのは大変、という意見もあるかもしれません。しかし、あまり凝ったものを作る必要はありません。「議論を促す」という目的さえ達成できるのなら、論点を書き出した簡単なメモ書き程度でもよく、それでも十分に効果は見込めます。

 

ただ、書店などを見渡す限り「ディスカッション・ペーパーの作り方」を説いた書籍はあまり見当たらないようです。「会議本」、すなわち会議を円滑化するファシリテーションのノウハウを記した本はたくさんあります。また「資料本」、すなわち説得力があって分かりやすいプレゼン資料の作り方を記した本はたくさん見かけます。

しかし、議論を触発し、会議や意思決定を円滑化する(そして皆さんの残業とストレスを減らす)「会議資料本」なるものは、あまりなかったのではないかと思っています。

また、「ファシリテーション」の解説書は多いのですが、進行役としての「仕切り方」を中心にしており、瞬発力や整理力のいる、なかなか難しい役割ではないかと思っています(私も苦手です…)。それよりは、議論を促す資料をあらかじめ用意しておくほうが難易度は低いと考えています。

 

というわけで、いずれ、そのようなディスカッションペーパーの考え方や作り方を、自分の経験をふまえつつ詳説していければと思います。ご期待下さいませ。

 


 

自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。

paperchase.hatenablog.com

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