たまには大胆にウソをつきたい診断士の方へ
※2019年2月10日追記:次回は3月9日(土)午後@西日暮里になります。お申込みはこちらからどうぞ!
タスクール主催で初となる理論政策更新研修(中小企業診断士に定期受講を義務付けられている、知識補充のための研修)が去る8月6日に都内で行われました。
私は「コミュニケーションゲームを通じた従業員評価手法」をテーマに登壇させていただき、理論研修での講師も初めてとなりましたが、どうにか無事に終えることができました。というかこちらの狙いどおり、非常な熱狂をもって終わらせることができました(ラスト45分は超熱戦でしたね>受講者各位)。
研修の内容についてはタスクール理論研修のHP(またはこちらの過去記事参照)にて記載のとおり、「コミュニケーションのゲームを用いて社員のスキルを評価する手法を体験し学ぶ」というものです。
このゲーム(「人狼」と言えば分かる方もいると思います)はシンプルかつ奥が深く、ビジネスにも通じるスキルの発揮が求められるため、楽しみながら多くの気づきを得ることができます。
つまり、
- 4時間飽きずに受講できる
- 人材スキルの評価手法が学べる
- 自分のスキルの強みや課題に気づける
といった点が本研修から得られるベネフィットです。
ただ、これを開発・実施する中で、さらに大きなベネフィットがあるなと気づきました。それは
- 堂々をウソをつける
というものです。
このゲームでは人狼役になった人は、ウソをつき通さなければなりません。大きくは人狼チームと市民チーム(要はモンスター VS 人間)に分かれるのですが、人狼役は徹底して市民のフリをしなければなりません。
ウソをつかなければならない、というか、ウソが上手いほど勝てるゲーム、ウソが匠みなほど周囲からリスペクトされるゲームです。また、市民チームでも一部の方(「預言者」「ボディーガード」という特殊な役職の方)は、しばらく自分の正体を隠しておく(そしてここぞというタイミングで明かす)必要があります。その点でも一般人のフリをするスキルが求められます。
なぜこのゲームが世界中で愛され、そしてこの理論研修でも盛り上がるのか。それは前述のとおり「シンプルさ」「奥の深さ」が挙げられますが、加えて「堂々をウソをつけることの快楽」にあるのかもしれません。
私達、特に中小企業診断士のような高潔さ、清廉潔白さが求められる職業では「ウソ」をつくことは決して許されません。特にインターネットやSNS全盛の昨今、不正や隠し事の多くは容易に暴かれ、多くの人に伝播し、そうして当人や診断士そのものに対する信頼が失われます。だから私達は、正直に、真摯に、誠実に、目の前の仕事に取り組んでいく必要があります。
しかし一方で、いい人であり続けるのもラクなことではありません。時にはハメを外したくなります。自分じゃない自分を演じてみたくなることもあります。ウソをついてバレるかバレないかのスリルを味わいたい、そう思うこともあります。
まあ、診断士も万単位で存在していますので、プライベートでウソをつきまくっているゲスな人も中にはいるかもしれませんが…そうでない大多数の方にとっては、この研修はある種のリフレッシュの場になると、私は考えています。
後ろめたさを抱えることなくウソをつきまくりたい方にはぜひオススメの研修です。しかも、仮にウソがばれたとしても、ゲームで負けるだけです。何も失うものはないのです。ジェットコースターと同じで「スリルがあるけど安全」な空間です。
次回は10月6日(土曜)午後、神田近辺での開催です。すでに数名の参加希望をいただいていますが、(8月25日現在)まだ席はあります。「診断士版ライアーゲーム」へのご参加を、ぜひお待ちしています。東京以外での開催も検討中です。
顧客からの苦情に対して「お礼」を言うことの危険性
以前働いていた会社でのこと。同じプロジェクトに配属された若手から資料のレビュー(確認)を依頼されました。
確認してみると、(丁寧にやっていれば避けられたはずの)不整合や誤りが複数あり、ちょっと目に余るほどだったので厳しく注意しました。
そうしたところ、彼は「ご指摘ありがとうございます」と返信してきました。
それに私はなぜかイラッとしました。
そして、そんなことが3回ほど続いた後、私はついに「いや、そこは『ありがとうございます』じゃないでしょ?」と強く叱ってしまいました。
なぜ私はイラッとしたのでしょうか。
これは想像ですが「謝るべきときに謝っていない」からではないかと思います。人が謝ってほしいと思っているとき、そこでは「ありがとうございます」の感謝の言葉は代替として機能しないようです。(書いていて気づきましたが)「感謝」という言葉には「謝る」という字が含まれています。しかし、「感謝」をしても謝ったことにはなりません。
特に、彼はプライドが高かったのか、(最近よく見かける)「謝ったら死ぬ病」にかかっていた気があり、お詫びの言葉を言いたくないから、逃げ道として「ありがとうございます」を使っていたのが透けて見えたような気もします。だからこそ余計にイラッとしたのかも知れません。
また、「ありがとうございます」は、プレゼントを贈るとか仕事を手伝うなど「相手のプラスになることをしてあげた」場合に使われる言葉です。双方の良好な関係を前提として使われる言葉です。不満があって怒っているのに「ありがとうございます」と言われたら、普通の人であれば「別にプラスになることをしてやったわけじゃない!」と、神経を逆なでされた心情になるのかも知れません。
そういえば昔、ある店で接客の大きな不手際があって迷惑を被ったので会計の際に伝えたことがあります。その際にも「ご指摘ありがとうございます」と言われ、何か違うよな、と思ったことがあります。「貴重な意見をいただきありがとうございます」というのもありました。いやいやお詫びが先でしょ?と思いますし、言うまでもなく、この店へのリピートはもう無いなと思います。
このようなお店、けっこう見かけます。「ありがとう」というプラスの言葉を使っているからいいじゃないか、と思い込んでしまっているのかもしれません。
「感謝の気持ち」は商売をする上でとても大切です。しかし、やはりお詫びのタイミングで使うのは逆効果なんじゃないかなと思うのです。
宣伝。8月7日に研修やります。
「4時間があっという間」の理論研修、平日夜にやります。
ウェブサイトもこの度オープンしましたが、名古屋を中心に活躍されているタスクールが、このたび理論政策更新研修※を開始することになり、私も東京地区を中心として講師を務めさせていただくことになりました。
※中小企業診断士の資格維持のために定期的な受講を義務付けられている研修(→ただし、我々の提供する研修は診断士以外の方の受講も歓迎です。あらゆるビジネスパーソンにとってプラスになる内容を提供します!)
今回の立ち上げに向けて、研修をどのように提供すべきかを、タスクール代表の渡邉さんと議論を重ねてきました。いくつかのアイディアが出ましたが、基本的には「受講者ファーストな理論研修」を目指したものとなっています。
以下、理論研修について仲間の診断士からよく聞かれたニーズと、それに応える形で我々の提供する研修の特色を紹介します。
■よくある声①「サラリーマンなので平日の昼間は受講できない!」
特に診断協会の提供する研修は、平日昼間に開催されるものが多いようです(最近の東京開催のスケジュールを見ましたが約半分が平日でした)。独立診断士であればよいのですが、企業内診断士であれば会社を休まない限り受講できません。一方で、土日の開催は申し込みが殺到して受講できなかったり、そもそも土日はプライベートや家族のために有効に使いたい、といった声もあります。
特色①:そこで我々は思い切って「平日夜」というスケジュールを用意してみました。休憩含め4時間15分の時間を確保しなければならないということで開始時刻は非常に迷いましたが、「18:45に開始して23:00に終了」とすれば、近郊(8月7日の初回は神田で開催)で働く方であればなんとか受講できるのでは、と考えました。
仕事後にさらに研修受講か…とちょっと大変に思うかもしれませんが、飲み会に参加したつもりで時間と費用を提供いただければ、かならずそれに見合う有益なコンテンツ(そして受講ポイント)をもってお応えしたいと思います。
平日に受講してしまえば、土日をプライベートのために確保できるようになります。ぜひ参加をご検討ください。(もちろん、タスクールでは平日昼間や土日の開催も別途予定しています)
■よくある声②「平日だと急な残業で受講できないかも…」
診断士の方は大きな仕事を任されていたり、重要な役職についている方も多いので、急な残業で18:45に間に合わない、という可能性もあるかも知れません。
特色②:遅刻は15分までであれば対応可能です(終了後に15分の補講を受講すれば修了扱い)。諦めずにぜひお越しください。
また、どうしても当日参加できなくなった、という場合には、研修開始時刻までにご連絡ください。①手数料をいただいての返金 または、②手数料無しで他日程への振り替えが可能です。
(ちなみに東京の診断協会の研修は原則キャンセル不可。やむをえない場合は2営業日前までに連絡が必要。神奈川は当日1週間前からのキャンセル不可となっています)
■よくある声③「理論研修は4時間もあって長い…」
最近は民間機関による理論研修も増え、バラエティに富み、内容も魅力的なものが増えてきました。しかし、やはり4時間は長い、という声も多数聞かれます。
特色③:そこで私は「4時間があっという間!」な研修コンテンツを用意してみました。8月および10月に神田で予定されている研修は「コミュニケーションゲーム」がテーマです(「人狼」と言えばご存知の方もいらっしゃるかもしれません)。
シンプルかつ奥が深いルールとなっており、中小企業における人材評価・育成の新しい手法や事例を、楽しみながら学ぶことができます(というか非常に白熱します)。きっと、当日の終了時刻には「時間があればもう1ゲームやりたい!」と思われるはずです。
また、タスクールでは他にもカレーのプロによる「カレーで学ぶ商品開発」など、ユニークなコンテンツをぐいぐい提供していきます。
■よくある声④「近くで開催されない…」
東京や神奈川などの理論研修は日程も多く、まだ受講しやすいのですが、それ以外の地域ではそもそも開催が少ないため、すぐに満席になってしまったり、大切な私用と重なってどうしても受講できない、という悩みをよく聞きます。
特色④:タスクールではそのような地域にどんどん飛んでいきたいと考えています。私がいる東京や、タスクールがある名古屋のほか、ここ数ヶ月以内に関西や北海道、沖縄での開催も予定されています。もちろんそれ以外の開催も検討しています。
「ウチの近くでやってほしい!」というご要望がありましたらぜひご一報ください。
また、今後も受講者の声に耳を傾けながら運営のアイディアを出していきたいと考えています。ぜひ、お申込みをお待ちしています!
TOEICハイスコア取ったけど英語が話せなくて経歴詐称を疑われた話
■ある面接での屈辱
タイトルのとおり、TOEICで高得点、具体的には900点を超えたことがあります。
それだけ聞けば羨ましいと思うかもしれませんが、そのせいで僕は大変な目にあったことがあります。
900超えたよ、自分すごいじゃん、ということで、履歴書や経歴書でアピールしていたのですが、ある仕事の面接において、面接官から「じゃあ、ちょっとしゃべってみて? テーマは『これまで仕事で最も大変だったこと』でよろしく」と言われました。
しゃべってみるとしどろもどろです。上手く単語が出てきません。文法や構成もぐちゃぐちゃ。
なんとかしゃべり終えたとき、面接官が言いました。
「君、このTOIECの点数、ウソついてるでしょ? 正直に言ったほうがいいよ?」
それからというもの、僕は本当に経歴詐称するようになりました。すなわち、仕事などで「TOEICどれくらい?」と聞かれたら「まあ、700点くらいですかね」と逆サバを読むようにしているのです。
そうでないと過剰に期待され、そしてその後にやってくるであろう落胆に、耐えられないからです。
■TOEICに合う人・合わない人
いまさらですが、TOEICは「読む・聴く」のみを測る試験です。「話す・書く」の実力は測れません(TOEIC SWというテストは別に用意されていますが)。それでも多くの企業でTOEICを重視しているのは、それがある程度「話す・書く」にも相関がある、つまり「聴く読むがある程度できるなら、話す書くもそれなりにできるだろう」と捉えているからなのかもしれません。実際、TOEICがハイスコアでペラペラな人はたくさんいます。
しかし、私のように相関していない人もいるようです。TOEIC未経験の方や初心者からしてみれば、TOEIC900点=ネイティブ級、くらいに映るかもしれませんが、実際には私みたいにボロボロな人もいます。
TOEIC900点取ればペラペラになれる!僕もネイティブの仲間入り! そんな風に考えて時期が僕にもありました。しかし、実際には何も変わりませんでした。
じゃあなぜ相関する人としない人がいるのかというと、私にもよく分かりません。適性やセンスの問題なのかもしれませんし、単純に学習不足なのかもしれません。たとえば私の受けた大学は長文読解一辺倒であり、リスニングも英作文もなかったので「読む」に偏って勉強してきており、アウトプット(話す、書く)の習慣が圧倒的に足りなかったのかもしれません。
(ちなみに「瞬間英作文」(後述)という本を使って3ヶ月ほど練習したところ、たしかにスピーキング力の改善を感じました。少なくとも学習で伸びる余地はあるようです)
皆様は、相関する人・しない人のどちらでしょうか。もし後者だとしたら、もしTOEICの点数が伸びても私のように経歴詐称を疑われたり、仕事で「TOEICのスコアはいいのに…ガッカリ」と言われるかもしれません。
(ちょっとマトリックスに整理してみました)
■今年の目標はVERSANT 60点
さて、私はTOEICを目標にするのを止め、今はVERSANTという試験を目標にしています。
私も最近まで知らなかったのですが、このような試験です。
- 電話やネットを使っていつでも受験できる
- 約20分間。聞こえてくる設問に口頭で答える
- 答えた内容がコンピューターで評価される
- つまり、リスニングやスピーキング力、発音力といった総合的な英語力が必要
- 楽天などでも導入されているらしい
- 受験料5400円
(参考)楽天で導入
これを知ったきっかけは、昨年10月にとある英語スクールに入ったことでした。TOKKUN English というところで、英語版ライザップのようなハードコア系コーチングサービスです。
ここでの学習体験談もいずれ書きたいと思いますが、入学時に受験したVERSANTは42点(目安=「基本的な情報(仕事や経歴、家族、余暇など)について述べることができる」)でした。それが約1ヶ月後に47点、2ヶ月後の卒業時に49点になりました(目安=「身近な事柄において伝えたいことの要点を包括的に述べることができる」)。
満点が80点であり、1ヶ月勉強して1点伸びるかどうか、というものらしいので、2ヶ月で7点伸びたのはかなりよい部類だと思います(TOEICとは性質が全然別の試験ですがあえて換算すれば100点アップくらいには相当するかなと思います)。
実際、最初の受験では「それ、本当に英語?」と思うくらいに聞かれていることがわからない設問も複数あったのですが、卒業時の受験では、明らかに聞き取れる単語や文章が増えていました。自分のスピーキングも滑らかになっているのを感じました。
これを60点を取れば海外での会議で困らないレベル、とのことなので、今年はそこを目標にしようと思っています。英語塾でのアドバイスを受けて、今はこんな教材を使っています。課題は人それぞれだと思いますが、ご参考まで。
・英語耳
・モゴモゴバスターズ(また別の記事で紹介したいですが、これは本当に良いです。TOEICなどのきれいな英語は聞き取れるけど洋画などはまるでダメという方向け)
・リーディング(TOIEC問題集やラダーシリーズ等いろいろ)
【スピーキング力】
・瞬間英作文
【実践】
・レアジョブ
・会社の会議(通訳がいるがなるべく英語を使う)
・外国人観光客のボランティアガイド(2月からやる予定)
どさくさ紛れに自著の宣伝。
高年収で一流の最強ビジネスパーソンはなぜ「記憶力」を大切にするのか
記事タイトルは東洋経済オンライン風に悪ふざけしてみた。「一流」とか「最強」とか乱発すると、逆に頭悪い感じになりますね。
さて、頭悪い・良いといえば、子供の頃は「頭が良い」とは「記憶力が良い」とほぼイコールでした。日本の受験は「詰め込み教育」「知識偏重」などと揶揄されますが、高校受験や大学受験では「記憶力」が求められ、私も合格するために(小論文などもあったものの基本的には)膨大な単語や公式を頭にインプットし続けた覚えがあります。
それが社会人になると様相が変わり、「創造的思考力が大切だ」とか「論理的思考が必要だ」などと言われるようになってきます。受験とビジネスとでは求められるものが異なるのでそれも当然ではあるのですが、私は仕事を進めるうえで「記憶力」は引き続き重要な能力の1つであると考えています。
私は「論理的思考(ロジカルシンキング)」について研修で教えたり、自著で解説したりしていますが、実は論理的思考を活用するためには「記憶力」が不可欠なのです。
その理由は、「論理的」とは要は「根拠を持って主張する」ということですが、根拠となる情報は「人の記憶」から引き出されることがあるからです。以下、自著より引用します。
晴れた日に出かけようとしたら、家族から「傘を持っていきなさい」と言われたとします。それだけでは、おそらく「どうして?」と言いたくなるでしょう。しかし、「夜の降水確率が90%もあるから、傘を持っていきなさい」と言われたらどうでしょうか。きっと「それなら持っていこうか」となるはずです。
この例では「傘を持っていきなさい」という主張を受け入れてもらうために、「降水確率が90%」という根拠を示したわけです。このように、何かを主張したいのであれば、データや情報による「根拠」が必要になります。
仕事も同じで、「○○をやるべきだ」と叫ぶだけでは、熱意は伝わるかもしれませんが、周囲はGOサインを出してくれません。なぜ○○をやるべきなのか、納得のいく根拠を示す必要があります。
この「降水確率90%」にあたる情報(根拠)は、仕事では人から入手したりネットで見つけたりするほかに「自分の頭の記憶をたどる」ことが多いはずです。
たとえば私の目撃談(デリケートな話なのでいろいろフェイクを入れます)。
ある部署において「管理職が足りなくなってきたので1人課長に昇進させたい。山下さん(仮名)はどうか」という話になりました。現部長や課長が集まって話し合い、「勤続年数も長く、成果もそこそこなのでよいのでは」とのことで満場一致で課長に昇進させました。
しかしその2ヶ月後、山下課長は部下に対するセクハラとパワハラ問題を同時に引き起こし(いわゆる「セパ両リーグ制覇」)、すぐに降格させられました。
当然、社内では「なんであんなやつを昇進させたんだ」「見る目なさすぎ」といった会話が飛び交うようになり、その部署および部課長達に対する評判は一気に揺らぎました。
実は兆候はあったのです、半年ほど前にも、山下さんはプチパワハラ的なトラブルを起こしていました。ただ、そのときは程度が軽かったこともあり、それほど大きな話にはなりませんでした。しかし、その時のことを部課長の誰かが思い出していれば、「彼は以前トラブルがあったようだから、ちょっと様子を見ませんか?」と言えたはずです。
主張「山下さんの昇進は様子を見るべき」
→根拠「以前プチパワハラを起こしたから」
…と誰かが主張すべきだったところ、その根拠となる情報が忘れ去られていたため、主張できなかったのです。
同様のミスは他にも見られます。たとえば他部署ですでに同様のプロジェクトが走っていてそれを知っていたにも関わらず、重複したテーマのプロジェクトを立ち上げてしまい大いに作業のムダが発生した、という失敗を目にしたことがあります。それも「忘れていた」ことが原因で引き起こされた判断ミスです。
主張「○○のプロジェクトはやるべきではない」
→根拠「他部門のプロジェクトと重複しているから」
…と誰かが主張すべきだったところ、その根拠となる情報が忘れ去られていたため、主張できなかったのです。
ここまで大きな失敗はそうそうないかもしれませんが、たとえば報告書などの文書作成において、上司から「XXXの件は考慮に入れているのか?」などとツッコまれ、「あ、忘れてました…」みたいなミスはどなたにもあるのではないでしょうか。
このように、記憶力を軽視すると、見落としてはいけない情報を見落として誤った判断を下してしまったり、仕事の品質が落ちることがあります。逆に、たしかな記憶力を持っていれば、判断ミスや品質低下を避けたり、より説得力を持った話し方ができるようになります。
創造性や論理性もたしかに社会人の必須スキルですが、かといって「記憶力」を軽視してよい、というわけではないのです。
大きな会社になればなるほど、持っておくべき情報量はさらに増えます。たとえば私のいる会社は従業員1万人くらいですが約70件のプロジェクトが同時に走っています。もちろんすべてを詳細に把握することはできませんが、プロジェクトの内容や状況など、見聞きしたことをなんとなく押さえておく程度でも、助けられることがしばしばあります。
もちろん、私達は忙しいので、受験生のように毎日机に向かったり電車の中で単語帳を使って仕事の情報を頭に叩き込むなんてことはできません。また、そこまでする必要もありません。
代わりに、気になった情報や今後自分の仕事に関係してきそうな情報は専用のメモファイルを作って書き留めておく、そして時々読み返すようにする。それだけでも他の人よりもはるかに「記憶力がいい人」「他の人が見落としがちな情報を見落とさず、根拠をもって鋭く発言できる人」になれるはずです。
単なる「メモ魔」や「情報コレクター」ではいけませんが、それを自在に使いこなせるようになったとき、きっとみなさんは社内で「なくてはならない人」になっているはずです。
なお、記憶といえば、(中小企業診断士試験などの)資格試験にチャレンジして「大人になっても暗記かあ…」と嘆いておられる方も多いかもしれません。
しかし、ここまで述べてきたように「記憶する力」を拡大しておくことは間違いなく仕事において活かされてます。それを信じて資格の勉強に励むことで、暗記や記憶に対するモチベーションも高まるのではないでしょうか。
メリットやデメリットをもれなく整理するには「経営資源」に着目する
工場に新しい設備を導入するか見送るか。新規事業を立ち上げるかそれとも既存事業に専念するか。私たちのビジネスは「決断」の連続です。そして、判断のためには、それぞれの選択肢のメリットとデメリットをもれなく洗い出さねばなりません。
また、営業の仕事に携わっている方であれば、自社の商品を買うことのメリットをきちんとお客様に伝える必要があります。「実は、こういうメリットもあるんですよ」と言うことができれば、お客様も身を乗り出すでしょう。
このように「メリット(&デメリット)洗い出し力」は、多くのビジネスパーソンにとって必須のスキルとなります。
しかし、洗い出しのうえでは、ぼんやりと頭で考えていても整理し切れません。表の形で書き出してみましょう。(宣伝になりますが、ご興味のある方は「思考整理のキホン」P108をご参考ください)
洗い出しに不足があると判断ミスにつながります。メリットを見落として「メリットが少ないからこの選択肢はナシ」と判断してしまったり、逆にデメリットを見落として損の多い選択肢を選んでしまうことになります。
メリットやデメリットを見落としなく洗い出すには「経営資源」の観点をもっておくことをおすすめします。
経営資源とは「会社の持ち物」のことです。よく「ヒトモノカネ」といいますが、この3つは代表的な経営資源です。ある選択肢を採用することによって、売り上げが上がるのであれば「カネ」への好影響があると言えます。従業員のモチベーションが下がるなら「ヒト」への悪影響があると言えます。このように、メリット(デメリット)=「経営資源への好影響(悪影響)」と考えることができます。
よって、選択肢のメリットやデメリットを洗い出す場合には「ヒト、モノ、カネ」への影響はどうか、という観点で考えてみるとさまざまなアイディアが出てきます。具体的には以下のような要素が考えられます。
ただし、余力があれば「無形経営資源」にも着目してみましょう。「ヒトモノカネ」は目に見えるので「有形経営資源」と言われますが、目に見えない経営資源もいくつかあります。
たとえば「情報」。有益な情報を持っていれば経営を有利に進めることができますので経営資源の1つと言えます。他には「ブランド」「顧客との関係性(絆)」「ノウハウ」などがあります。
たとえば、ブラックな企業経営をすれば、一時的に「カネ」は増えるかもしれません。しかし、「ヒト」のモチベーションや離職率は悪化します。人材の入れ替わりが激しければ「ノウハウ」も溜まりませんし「顧客」を連れて逃げる社員も出てくるでしょう。また、新聞沙汰にでもなれば「ブランド」イメージが下がります。このように企業の行動はさまざまな経営資源に複雑に影響を与えるのです。
慣れないうちは上記の有形・無形経営資源をリスト化して見ながら考えるようにすると、漏れが少なくなると思います。メリットデメリットの洗い出しにおいてはぜひ参考にしてみてください。
自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。
誰もがPCで毎日数回は実施している、本当は要らない手順(とそれをやめる方法)
■「ゴミ箱に移動しますか?」のムダ
パソコンを使っていて「要らなくなったファイルを捨てる」という操作はどなたも一日何回かやっていると思います。
ファイルを選んでDeleteキーを押すと、ゴミ箱に移動することができます(今までファイルをゴミ箱にドラッグしてた方は時間をムダにしています。ぜひDeleteキーでの削除を習慣づけましょう)。
で、削除しようとすると「このファイルをゴミ箱に移動しますか?」と確認のダイアログが表示されます。しかし、これって本当は要らないと思うんです。
なぜかというと、誤ってファイルを消去して戻せなくなってしまわないようにWindowsやMacでは「ゴミ箱」という素敵な概念があるわけです。誤って消去しても、ファイルは一時的にゴミ箱内にあり、必要なら元に戻すことができます。
このように誤操作への対策がなされてるわけなのに、なぜいちいち「ゴミ箱に移動しますか?」と聞くのでしょうか。慎重といえば慎重ですが、私には二重のフールプルーフ(予防策)はムダなように思えます。
■確認のダイアログを出さない設定にする
ということで私は、この確認のダイアログを出さない設定にしています。設定方法は、ゴミ箱を右クリック→プロパティを選ぶと、設定のダイアログに「削除の確認メッセージを表示する」というチェックがありますので、これを外します。
これを知ってから数年はこの設定にしていますが、私はそれで困ったことは一度もありません。繰り返しになりますが、誤って消去しても、ゴミ箱から戻せばよいわけです。(余談ですが、消去した直後なら"Undo"(Ctrl+z)ですぐに元に戻すことができます)
今まで何万個とファイルを捨ててきたと思いますが、その数だけダイアログ→「はい」の手間を浮かしてきたわけです。1回につき1秒だとしても、トータルで数万秒の削減です。
また、「いちいち確認してこない」ことの快適さは、この手の設定を活用されている方ならお分かりかと思います。業務中に矢継ぎ早にファイルを作ったり操作したりしていく中で、仕事の流れをいちいち止めずにスピード感をもってテンポよく作業を進めることができます。これが、ショートカットキーやこういった設定の最大のメリットです。
※補足:なお、私は絶対に今後使わないファイルを削除するときは[Shift+Delete]で削除しています。これは、ゴミ箱をすっ飛ばして削除します。
ゴミ箱に入っている状態では、復活できる分、当然にハードディスクの容量を使いますが、[Shift+Delete]によって、ハードディスクの容量を使わずに済みます。逆に復活できないというデメリットがありますので、ここだけは慎重な操作が必要になります(上記の設定をしていても、さすがにこっちの場合は確認のダイアログが出てきます)。
自著の宣伝。こちらの記事↓もご参考ください。